アメリカはフィラデルフィアに住む“りんたろう”のブログ


by ring_taro
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フィラデルフィアのアルゲリッチ

フィラデルフィア管弦楽団演奏会 (Apr. 7, 05)
キメル・センター、ボライゾン・ホール

フォーレ: 「ペレアスとメリザンド」組曲
マクミラン: 交響曲第三番「サイレンス」
ベートーヴェン: ピアノ協奏曲第一番

シャルル・デュトワ: 指揮
マルタ・アルゲリッチ: ピアノ

日本でもおなじみのデュトワがフィラデルフィア管の定期に登場。
ちなみにデュトワはフィラデルフィアでもおなじみの指揮者で、フィラデルフィア管のサラトガにおける夏季シーズンの芸術監督をつとめているそうです。このコンビでラフマニノフの交響曲などをレコーディングしていますよね。

プログラムによると、フィラデルフィア管によるフォーレの「ペレアス~」組曲全曲の録音は63年のシャルル・ミュンシュ指揮のものだけだそうです。
この録音、もし聴いたことがない方がいらっしゃったら、ぜひ聴いてみてください。ああ、あるほど、この組み合わせだとこういう音楽になるのねと納得。ミュンシュとフィラデルフィア管の特徴がおかしな方向にがっつり噛み合って、相当にユニークなものが出来上がっています。一曲目の冒頭から熱風がムワーっと吹いてくる感じ。最初から最後までオケはユルユル。

ああ、思い出しただけでも汗がふきだしてくる。

気を取り直してこの日の演奏ですが、弦ももちろん美しかったのですが、管楽器のソロがとにかくすばらしい!特にオーボエのリチャード・ウッドハムズとホルンのノラン・ミラー。

二曲目「糸紡ぎの歌」のウッドハムズのオーボエの見事さといったらそれはもう…。あいかわらず、ゆとりと軽やかさと詩情と、あとちょっとだけ「ほつれ」が混ざりあった、すばらしいソロでした。

ノラン・ミラーのホルンの音は決して何かを声高に主張するものではありません。しかしその控えめさのなかに、なんともいえない味わいがあります。一聴すると地味ですが、一度その味を知ると、曲の最初から最後までミラーのホルンを追いかけることになったりします。(また追いかけづらいんだ、これが。)
一曲目「前奏曲」の後半、ホルンが単音をモールツ信号のように吹く個所があります。なんということはない所ですが、そこがもう、すばらしかったんですよ。思わずため息が出るくらい。
彼の現在の肩書きはRetired Principalですが、勝手ながら一年でも長くこのオケで吹き続けて欲しいと思います。

マクミランの交響曲は、2003年にデュトワ/N響が世界初演をしたもので、今回が米国での初演。遠藤周作の小説『沈黙』にインスパイアされて書かれたものだそうで、そのためかオリエンタルな感じのフレーズが多用されています。
曲の冒頭と終わりの部分のイングリッシュ・ホルンのソロが見事でした。この曲は始めて聴いたのですが、マクミランらしく金管の強奏あり、ミステリアスなムードありで、とても面白い音楽でした。こう、全体的にカラッとしているところがいいですね。
ただ、お客さんはちょっとお疲れ。

休憩後はアルゲリッチとのベートーヴェン。

この人のパッションの爆発の根源にあるものとはなんでしょうか?あまりアルゲリッチの音楽に詳しくない自分的には、「唐突」なところも結構あったりして、かなりスリリング。オケも苦笑混じりに必死についていきます。

ただ、聴いているうちに次第にわかってくるものですね。「爆発」の前にはその兆しとしてのクッションなり助走なり雌伏なりがあることを理解したら、相当に面白く聴けました。

ただ、デュトワはさすがにアルゲリッチのことをよくわかってらっしゃる。アルゲリッチの自在な音楽に対して、しっかりと先回りしてオーケストラをコントロール。この「先回り」感覚がデュトワの指揮の特徴な気がします。この人は本当に上手いなー。

一番面白かったのは、三楽章冒頭。この頭のフレーズは、一つ目の音は「ひっかけ」で、普通は二番目の音にアクセントがあるのですが、アルゲリッチは明らかに最初の音にアクセントをつけて弾きだしました。これはこれで面白いのですが、旋律が進んでいくにつれて辻褄があわなくなってきます。

この冒頭の部分、ただでさえちょっとこんがらがっているので、この日の演奏ではもうおよそ「混沌」。それでその後、オケは普通のイントネーションで弾いちゃうんだから、もお。ただ、この直後、音楽が一気にクリアなものになるという思わぬ効果があったので、結果オーライということで。
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by ring_taro | 2005-04-09 17:32 | クラシックの演奏会