アメリカはフィラデルフィアに住む“りんたろう”のブログ


by ring_taro
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2004-05シーズンのラストはチャイコフスキー

フィラデルフィア管弦楽団演奏会 (May 12, 13, 05)
キメル・センター、ボライゾン・ホール

チャイコフスキー: ピアノ協奏曲第一番
チャイコフスキー: 交響曲第五番

クリストフ・エッシェンバッハ: 指揮
ラン・ラン: ピアノ

フィラデルフィア管弦楽団の今シーズン最後の定期演奏会はオール・チャイコフスキー・プログラム。最後ということで、ついつい二日連続で聴きに行ってしまいました。

この演奏会では弦のシフトが再び"1st Vn, Vc, Va, 2nd Vn"の順番に戻りました。アジア・ツアーはこの配置でいくのでしょう。

ラン・ランはこちらではとても人気のあるピアニストです。そのピアノはまさに自由奔放。今回のチャイコフスキーでも、時折みせるものすごい加速はまるで音の洪水。そしてどこまでも明るい音楽です。

「天真爛漫」と表現するのがいいかもしれません。時々ものすごい勢いでオーケストラにつっかかるんですが、それも「挑戦的」というのではなく、みんなにかまってほしくて敢えて悪戯をする無邪気な子供のよう。エッシェンバッハ指揮のフィラデルフィア管は(時々エッシェンバッハらしい手癖を仕込みますが)さすがに大人の対応で、音楽を自然に落ち着かせますが、そのやりとりがまた楽しい。

休憩後の五番はとても充実した演奏でした。数ヶ月前のこのコンビによる悲愴に比べると、もう少し金管が前面に出ています。

とにかく音楽が一ヶ所にとどまらず、常に動いている感じです。エッシェンバッハ得意の急ブレーキ(プラス時々ものすごいゲネラル・パウゼ)と加速とフレーズの過剰な表情付けでまさにキリモミ状。一楽章の一番最後の部分でエッシェンバッハはものすごい「ため」をしたのですが、一日目の演奏会ではオーケストラが反応しきれなく、破綻寸前になってしまいました。二日目ではさすがにしっかりと対応して、堂々としたクライマックスをかたちづくっていましたが。

二楽章の美しさといったら。。。しかしただ美しいだけでなく、エッシェンバッハのシリアスなアプローチのため、すごく厳しい音楽にもなっています。この楽章冒頭の緊張感はものすごかったです。まるでベートーヴェンの弦楽四重奏曲Op. 132の三楽章モルト・アダージョのよう。そこにホルンがオーボエが加わり、音楽が色づいていく様がとても感動的でした。しかし一楽章冒頭で呈示された「運命の主題(the Fate motto)」がかえってくると、金管のものすごい咆哮でそんな甘美な夢から醒まされます。この運命の主題の後、この楽章の最初にホルンが吹いた旋律をヴァイオリンが弾く個所、オーボエのウッドハムズのオブリガートがそれはもう絶品。ここ必聴。

終楽章はとてもドラマチックなアプローチ。ものすごい苦闘のぶんだけ、コーダが感動的になります。ここですさまじいアッチェレランドがあるのですが、オーケストラも一糸乱れず突進します。

1シーズン通してエッシェンバッハ指揮のフィラデルフィア管を聴いてきたのですが(今数えたら、このコンビの演奏会に12回行ってました)、次第に彼の音楽に惹かれている自分がいました。思うのですが、彼は音楽を無条件で「信じて」いるのではないでしょうか。今回のチャイコフスキーでいえば、運命との戦いから勝利へという「物語」と信じているのです。この21世紀にメタとも脱構築とも無縁な解釈といえばいいでしょうか。

そのエッシェンバッハの真摯な姿勢に胸をうたれるのです。
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by ring_taro | 2005-05-15 20:25 | クラシックの演奏会