アメリカはフィラデルフィアに住む“りんたろう”のブログ


by ring_taro
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ショパン ピアノ協奏曲第一番

参考CD ポリーニ/クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団(EMI)

ショパンが20歳の時の作品。まだ彼がポーランドにいた時代のものです。

一楽章。とにかく序奏が長い。ピアノソロが登場するのは実に4分が経過したあたりです。退屈に感じるかもしれませんが、これはもう我慢してピアノの登場を待ち焦がれるしかありません。しかしこの4分間、意味がないわけではありません。この楽章で展開される主題を提示してもらっているのです。この部分で旋律を頭に叩き込み、ピアノソロがそれらをどう料理してくれるのかワクワクしましょう。いうなれば食事前に「今日の食材」を見せてもらっているとでも考えてください。

まあ、要するに料理は始まっていないわけですが。こういった苦行はベートーヴェンの三番、ブラームスの一番などでも要求されます。
ただこの序奏部、スコアを見ながら聴くと幾度も転調を繰り返す様がとても巧みで面白いのですが。

で、ソロにはいってからも長いです。(通常、一楽章だけで20分前後近くかかります。)贅のかぎりを尽くしたかのようなめくるめくピアノ技巧と叙情をお楽しみください。

二楽章と三楽章は真っ当な長さですから、安心してお聴きください。
「ロマンス」と題された二楽章は管楽器が彩り程度の最小限の出番しかなく、ピアノソロと弦による伴奏というかたちで進んでいきます。ちょっとだけ気まぐれに紡がれる美しい旋律を堪能しましょう。三楽章は一転して快活なポーランドの舞曲です。

白状しますとこの曲、個人的に長らく「苦手な曲」でした。序奏部がとにかく退屈だし、ピアノソロが入ってからもショパンを楽しむにはあまりにも長すぎると感じていたからです。しかしポリーニの1960年録音のCDを聴き、その苦手意識をようやく払拭することが出来ました。とにかくこの録音は素晴らしいです。今までありがとう、アルゲリッチさん、ルービンシュタインさん。

このときポリーニは18歳。この録音の後すぐ8年に及ぶ研修期間(雲隠れ)を経て70年代以降一世を風靡するピアニストになるのですが、この時点で完成されているその凄まじすぎる技巧には驚くほかありません。そしてそれ以上に評価したいのは、この協奏曲にまとわりつきがちな気まぐれやセンチメンタルや優しさといった甘っちょろいもんを排したポリーニのストイックな姿勢です。ショパンの小品ならそういった軟派なものも必要かもしれませんが、40分に及ぶこの曲でやられると退屈になってしまうのです。実は70年代のポリーニのショパンに比べるとそれでも結構自由に弾いていると思うのですが、しかし曲全体を貫く強い意志に感服します。

クレツキ指揮のフィルハーモニア管もポリーニをしっかりとサポートしています。特別に何かをしているわけではないのですが、「ああ1960年頃のフィルハーモニア管だなあ」と安心させてくれる響きです。でも「フィルハーモニア管らしい」サウンドってなんだろう?少し薄めの弦のくすみつつも光沢のある響きかなあ。クレンペラーの指揮したものにはあまりないんですよね。カラヤンなんかが典型かな。

ちなみに僕の持っているCDにカップリングされている68年録音のバラード第一番は必聴です。人間として持っていけなきゃいけないいくつかの感情が欠落しちゃってるんじゃないかなあとすら思う、もはや悪魔の所行としか思えない演奏です。
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by ring_taro | 2006-09-21 23:58 | クラシックの曲紹介