アメリカはフィラデルフィアに住む“りんたろう”のブログ


by ring_taro
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またしばらく投稿してなくてごめんなさい。
用事で西海岸に行ってました。そのことについてはまた今度。

さっきフィラデルフィア管からメールが来て、「2007-08シーズンをもってエッシェンバッハが音楽監督を辞める」とのことです。

ショックだ。。。いくらなんでも早すぎます。

とりいそぎ。
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# by ring_taro | 2006-10-21 05:01 | フィラデルフィア管弦楽団
フィラデルフィア管弦楽団演奏会 (Oct. 07, 06)
キメル・センター、ボライゾン・ホール

ブラームス: ピアノ協奏曲第二番
チャイコフスキー: 交響曲第六番「悲愴」

クリストフ・エッシェンバッハ: 指揮
アンドレ・ワッツ: ピアノ

今回は書きたいことがたくさんあるので、さしあたって今日は「悲愴」のみ。

土曜日の演奏会の前に、木曜朝のオープンリハーサルを聴いてきました。面白かったですよー。ああ、こうやってエッシェンバッハの音楽はできていくんだと納得することがいくつかありました。

リハーサルで一楽章を通したとき、エッシェンバッハにしては随分と淡白でおとなしい「悲愴」だなと思っていたのですが、そこからエッシェンバッハの表情付けが始まります。

実は結構細かいところまで指示する指揮者さんのようです。
例えば弦と木管が交互に同じ音型を演奏するところで「木管が弦に比べてどこそこの音が少し長い。弦にあわせて」とか、管楽器奏者の一人の音程の悪さを指摘したりとか、気にくわないところがあると例えば1stヴァイオリンに何度もパート弾きをさせるとか。とてもドレスリハーサルとは思えない細かさでした。自分の大学オケ時代を思い出したりしましたよ。

あとはエッシェンバッハ名物のタメ、粘り、加速を仕込んでいく作業です。
例えば一楽章第二主題がヴィオラによって導入される部分、ヴィオラは最初あっさりはいったのですがそこで止めて「もっとじっくり。速すぎる!」とヴィオラのパート弾くをさせたりします。このようにしてどんどん音楽が「濃ゆい」ものになっていくのですね。二楽章に関しては、ヴァイオリンに露骨にポルタメントを要求する部分があったり。

リハーサルで一番驚いたのは三楽章の最後部分。エッシェンバッハはちょっと考えられないような凄まじいアッチェレランドをかけていきます。指揮通りに演奏したら音楽が崩壊するんじゃないかというくらい。ところがオーケストラはどこ吹く風。「お付き合い」程度のアッチェレはしますが、指揮とはどんどんズレていきます。で、三楽章を通しおえてすぐエッシェンバッハ氏は「遅い!」と叫びました。ものすごい緊張感だったなあ。

で、本番なのですが、リハーサルとはうってかわった完成度と気迫。特に金管の咆哮は鳥肌がたつほどでした。さすがプロですね。それにしても一楽章第二主題や二楽章のあの美しさはフィラデルフィア管でないとちょっとだせないものですね。
懸案の三楽章終わりですが、加速はするもののかなりの安全運転になってしまっていました。指揮とオケも完全にかみ合ってましたね。あのリハーサルの狂気の加速は何だったのだろう。。。

二年前にこのブログを書き始めた頃にも少しふれたことですが、エッシェンバッハ/フィラデルフィア管の音楽というものは、実は相当に両者の妥協の産物的な要素が強いのではないでしょうか。リハーサルを聴いてそのことをより強く感じました。少なくともエッシェンバッハの思い描く「悲愴」は、この日鳴らされたそれとはかなりの距離があると思います。

これは完全に僕の思い込みかもしれませんが、リハではオケと指揮者との間に結構な緊張がしばしば走りました。でも確かにエッシェンバッハのアプローチ(テンポ設定、旋律の歌わせ方や音量における表情付け)通りに演奏されたとしたら、相当にグロテスクなものができてしまう可能性もあるんですよね。少なくとも長大な曲を一つのものにまとめあげるという構成力という点では、かなり問題のある人だと思います。

フィラデルフィア管には長い歴史のなかで多く聴衆を魅了した名演・名盤を創り続けたという矜持があるでしょう。おのおののキャリアに裏付けられたプライドがあるのでしょう。そこで両者は折り合いを付けて現在私たちが聴いている音楽が出来上がるのだと思います。今ここで音楽が生まれつつある現場の証人となる興奮もありますし、同時にかなりの危うさのある音楽ですね。
これが例えばかつて氏が音楽監督を務めたヒューストン響のような「素直な」オケだと、よりナマのエッシェンバッハの音楽に近いものが出来上がるのだと思います。

パリ管との演奏会を聴いている人の感想とかもぜひ聴いてみたいなあ。パリでエッシェンバッハがどのような音楽をやっているのか。とても興味があります。

ところで「悲愴」もレコーディングされるようです。三楽章の後に予想通り拍手が起きてしまいましたけど。(四楽章の終わりはみんなすごい我慢してました。)
リハーサルで「バランスをチェックするために三楽章の終わりをちょっとやります。物音を立てないでください。」といって終わり数十小節をやってましたけど、あれはバランスのためじゃないね。拍手が起きちゃった場合にそこを切り貼りするためだね。間違いない。
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# by ring_taro | 2006-10-08 23:56 | クラシックの演奏会
フィラデルフィア管弦楽団演奏会 (Oct. 03, 06)
キメル・センター、ボライゾン・ホール

バッハ: ヴァイオリン協奏曲第二番
アサド: ヴァイオリン協奏曲
ショスタコーヴィチ: 交響曲第五番

クリストフ・エッシェンバッハ: 指揮
ナージャ・サレルノ=ソネンバーグ: ヴァイオリン

前回のラン・ランといい今回のナージャといい、エッシェンバッハは「やんちゃ系」ソリストがお好きなんでしょうか。

二年前にメンデルスゾーンをやった時にも思ったのですが、この人のヴァイオリンはできるだけ前の席で聴いた方がいいです。なんというか、彼女自身が一番心地よく聴こえる音量で弾いている感じなんですよね。僕は幸い前の方の席(あまりに前すぎてやっすい席)に座っていたので楽しめましたが、四階席とかちゃんと聴こえてるのかな。

それにしてもここまでバッハを自由に弾く人ってそうはいないでしょう。旋律は歪み、イントネーションは好き勝手に変え、カデンツはチャルダーシュみたいな感じにし、ところどころにグリッサンドを入れてきます。僕の隣に座っていた紳士なんて、ナージャがそんな「オカズ」を挟むたびに苦々しそうなうめき声をあげていました。

ただなあ。結果的に「ナージャらしさ」がでてるんじゃなくて、「ナージャらしさ」をだそうというのがアプローチの出発点になっている感じが否めないんですよね。面白いことはこのうえないんですけど。なにもバッハでやらなくてもなー、とは思っちゃうんですよね。

一番よかったのは二楽章。曲の真ん中に音楽のピークがしっかりと計画されていて、そこへ向かう求心力、そこから音楽が収束へ向かうはかなさが緊張感をもって演奏されていました。しかしこれはエッシェンバッハの功績だよなあ。

次のヴァイオリン協奏曲を作曲したクラリス・アサドはなんとあのギターデュオ「アサド兄弟」のセルジオさんの娘さんだそうです。1978年生まれって僕より年下かよ。

曲はいかにもブラジルの人の曲らしく熱さと気だるさが同居した雰囲気。それでいて現代音楽的なテイストも感じられるなかなか面白い曲です。それにしてもものすごく難しそうな曲なのに、ナージャのヴァイオリンはバッハよりもはるかに上手く感じられます。まあ、そういうものですか。バッハって難しいですよね。

さて、メインはショスタコーヴィチの五番。この有名曲は「ショスタコーヴィチまにあ」になればなるほど「好きじゃない」と言う人が多くなりますが、僕は大好き。特に一楽章と三楽章の冷たい美しさはちょっと他の曲では味わえないものです。

演奏前に「この曲はレコーディングするので物音を極力立てない努力をしてください」といういかにもアメリカらしいもってまわったアナウンスがありました。
そうかー、これCDになるかー。ちょっとすごいですよ、この演奏。ユニークさという意味では今までに出た三枚のCDとは比較にならないと思います。

とにかく一楽章から内容が濃いです。いくつかのエピソードが積み重なってシークエンスとなっているような曲想が特徴的なこの楽章ですが、すべての場面すべての音に意味を持たせるエッシェンバッハの手腕に感心します。美しく滑る弦にも、軋む木管にも、咆哮する金管にもすべて意味があるのです。この場面場面の正確を明確にするというエッシェンバッハの手法はショスタコーヴィチ(とそしてなによりマーラー!)だからこそ成功するという側面はあるのでしょう。曲によってはまとまりがなくなっちゃいますものね。

ただ、エッシェンバッハのアプローチはどこまでも音楽的なので、(ショスタコーヴィチ解釈に時に見受けられるうっとうしい)楽譜の外にある非音楽的なディスコースに寄りかかった解釈とは一線を介します。やっぱ、ショスタコーヴィチはこうでなきゃ。言語化されえない、そしてそれゆえに個人的にも普遍的にも同時になりうる悲/喜劇こそがショスタコーヴィチの最大の魅力だと思うわけですよ、僕は。(とまあ一生懸命言語化しようとしている自分が滑稽なのですが。)

二楽章はこれまたエッシェンバッハ名物の暗く重いスケルツォ。とにかくテンポが遅い。一歩一歩噛み締めるように進みます。しかしこの遅さ、CDで聴いたらどう思うのかな。でも、ライブで体感するテンポとCDで聴くテンポは全く違うものか。部屋で聴いたら案外普通に感じるのかも。あ、今の僕発言、なんかチェリビダッケみたい。逆チェリビダッケか。

三楽章は何パートにも分割された弦セクションが美しく、演奏によっては幾層に重ねられても失われない透明感がたまらなく素敵なのですが、この日の演奏は透明感よりも「うねり」を感じさせるものでした。例えるならば、一つ一つはか細い空気の流れが綾となりつむじ風になるような。そして有名なクライマックスの場面は実に劇的。

いよいよ四楽章。今、スコアが手元にないので確認できないのですが、遅めに始まりその後テンポがめまぐるしく変わるのは確かスコア通りなんですよね?聴いててクラクラしてしまいます。まあそこが楽譜通りとして、クライマックスの遅さは。。。何なんだろうあれは。どんどん遅くなって、最後には止まっちゃうんじゃないかというくらいでした。全弓で音を刻む弦、両手で叩くティンパニ、力尽きる金管。描かれたのは人類の夜明けか、絶望のもがきか。いや、そのような一切の言語化を拒む昂揚か。いやあ、腰を抜かしました。

ところで今シーズンから昨年度空席だったホルンの首席にジェニファー・モントーン(Jennifer Montone)という人が就いたのですが、この演奏会ではものすごくよかったです。昨年度から何度かのっていて、オープニングナイトでもチャイコフスキーを吹いていたのですが、正直言ってあまり好きではありませんでした。しかしこのショスタコーヴィチは完璧。圧倒的な存在感でした。
この人、就任にあたってちょっとしたセンセーションをおこしたのですが、それはまた別の機会に。
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# by ring_taro | 2006-10-06 16:15 | クラシックの演奏会
フィラデルフィア管弦楽団オープニングナイト (Sep. 21, 06)
キメル・センター、ボライゾン・ホール
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モーツァルト:「フィガロの結婚」序曲
チャイコフスキー: フランチェスカ・ダ・リミニ
ショパン: ピアノ協奏曲第一番

クリストフ・エッシェンバッハ: 指揮
ラン・ラン: ピアノ

オーマンディ編曲のアメリカ合衆国国歌から始まったオープニングナイト。こういうところでオーマンディ編のものが使われるところがフィラデルフィア管ですね。

ところでこの合衆国国歌、「歌いづらい国歌」として有名です。最初気持ちよく歌っていても途中でどんどん音が高くなって、一番高くなったところでフェルマータ。この日も最後は全員裏声。

オープニングナイトというものはまあ所詮は「お祭り」ですし、演奏のクオリティについて語るのは野暮というものです。そんなにリハーサルをする時間もないでしょう。それは聴いててよーくわかりまフガフガ。。。

それでもエッシェンバッハは音楽的な妥協は一切なさらない姿勢のご様子。特にフランチェスカ・ダ・リミニではオーケストラを振り回す振り回す。特に地獄のつむじ風の部分では音楽がうねりまくります。終わり方が特にものすごかったです。崩壊寸前までアッチェレランドをしたあげく急ブレーキ。
フィラデルフィア管のシーズンが戻ってきたなー、またエッシェンバッハの音楽が聴けるんだーとやたらうれしくなってしまいました。

そしてそのまま休憩なしでショパンのピアノ協奏曲へ。

エッシェンバッハらしい内容の実に濃い序奏部の後、いよいよ「俺たちフィラデルフィアの」ラン・ラン登場。
この人のピアノはもう「やんちゃ」そのもの。やりたい放題、好きに弾き放題。どう弾くかは完全にその場その時の気分で決めてるんじゃねーかと思ってしまうぐらい気まぐれです。しかもべらぼうに上手い。なんていうのかな、指揮者もオーケストラも彼のやんちゃっぷりをわかった上でサポートし、お客さんもそんな様をいとおしく思い、ラン・ラン自身もそんな周りの暖かさをすべて承知の上でその空気に乗っかってやんちゃを演じているかのような、そんな会場全体を丸ごと包み込む「共犯関係」を感じてしまいました。
まあこれはパフォーマンスの一つの理想型なのかもしれません。個人的には「それでいいのかよ」という思いがいくらかあることは否定しませんが。でも彼は1982年生まれの若手中の若手。これからどんどん円熟していくのでしょう。今は彼の若さゆえのやんちゃを楽しむことにしましょう。

一番よかったのは二楽章。彼の気まぐれな感性が「ロマンス」という曲想にあっているのでしょう。綿々と紡がれる旋律は美しさの極み。エッシェンバッハ指揮による伴奏はどちらかというと厳しくストイックなもので、これが音楽を甘ったるいものにさせていませんでした。

アンコールはマエストロとラン・ランの連弾によるシューベルトの「軍隊行進曲」。ここでもラン・ランのやんちゃっぷりは遺憾なく発揮されるのでした。

(写真は演奏会を聴き終わりディナー会場に向かう上流階級の皆様。)

なお、この日の曲目の拙による解説はこちらこちら
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# by ring_taro | 2006-10-05 21:33 | クラシックの演奏会
b0044005_19123172.jpgまたまたご無沙汰してしまいました。すいません。

昨日ものすごいヤマ場がありまして、ようやくそれを乗り切った次第です。
で、その解放感からそのままフィラデルフィア管の演奏会に行ってまいりました。

エッシェンバッハ指揮でバッハのヴァイオリン協奏曲(ソリストはナージャ・サレルノ=ソネンバーグ)、ショスタコーヴィチの五番他でした。オープニングナイトのこともまだ書いてないし、よーし、この二つの演奏会は今日帰ってきたら書き上げるぞー。

で、その演奏会の後、フィラデルフィア管の新譜発売を記念したエッシェンバッハのサイン会がありました。新譜が出てることすら知らなかったので、CD買ってサインもらってきちゃいました。(15人くらいしか並んでなかったけど。ちょっと寂しかった。)

今回の曲はマーラーの六番。昨年度の定演で僕が一番よかったと思っていたものなのでものすごくうれしいです。カップリングにはエッシェンバッハ他フィラデルフィア管の団員たちによるマーラーのピアノ四重奏曲が。

まだ聴いてません。六番って聴くのに結構体力がいりますよね。

次回の新譜はサン=サーンスの「オルガン付き」だそうです。発売は2007年頭だとか。
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# by ring_taro | 2006-10-04 19:30 | フィラデルフィア管弦楽団
オープニングナイトについての感想はもうしばらくお待ちください。(多分水曜以降になると思います。)
それまでは小ネタを。

フィラデルフィア管のメーリングリストにはいってらっしゃる方はもうご存知でしょうが、このオーケストラのライブ録音をオンラインで購入しダウンロードできるようになりました。

で、現在期間限定で昨年のエッシェンバッハ指揮のベートーヴェンの交響曲第五番が無料でダウンロードできます。(住所等個人情報を入力する必要があります。)なんか太っ腹ですね。

今聴いているのですが、よく整備されつつも緊張感のある熱い演奏です。ただ、CDとして発売されたバルトークやチャイコフスキーにもいえることですが、実演を聴いた時のドロッとしたうねるようなサウンドが随分すっきりとしたものとなっております。

僕は昨年度全曲やったベートーヴェンは全集を出してくれると期待していたんですけどねー。どうもアナログ人間なのでCDやレコードという形でないと入手したという気になれなくて。(CDでアナログってのも間抜けな発言だな。)
カタログを見るとベートーヴェンは九曲ともアップされているようです。五番以外はMP3形式で$4.99。それ以外では。。。おお、オーマンディのショスタコーヴィチの六番なんかがあるよ!オーマンディやムーティの時代のものをもっと出してほしいなあ。
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# by ring_taro | 2006-09-25 22:36 | フィラデルフィア管弦楽団
b0044005_20463186.jpgご無沙汰しております。りんたろうです。

およそ一年、書き込んでいなかったわけです。時々のぞきにきてくださった皆様、申し訳ございませんでした。
この一年いろいろと忙しくてどんどん余裕がなくな。。。いや、やめよう。こんな言い訳、誰も興味ないだろうし。それに週に何度かブログをアップできないほどに忙しい状態なんて、そんなわけありませんものね。ものすごい多忙な身でありながら毎日面白いことを書いている人はたくさんいますものね。頭が下がります。

ここ最近、予想外の人から「実はブログ見てました」「あ、あれ書いてたの君だったの」「いつまで放置してんだコラ」など、温かいお言葉をいくつかいただき、もう一度書き始めようと決心した次第であります。もしよろしかったらまたおつきあいください。

実はなにも書き込まなかった一年の間にもフィラデルフィア管はしばしば聴きに行っていました。昨シーズンの印象深かった演奏会についてはまた書かせていただきます。


さて、今週の木曜、フィラデルフィア管の2006-07シーズンのオープニングナイトがありました。いよいよシーズン開幕です!

僕も三年目にして初めてオープニングナイトに行ってきました。今まではチケットが高額だしラッシュチケットもないしと敬遠していたのですが、セット券で格安で購入できると知り、今回は初参加です。

公演前にタダ酒飲みながら周りの人の豪華な衣装を眺めているというのも、楽しいものですね。時々「行き過ぎ」な衣装のカップルがいたりして。

曲目は「フィガロの結婚」序曲、チャイコフスキーのフランチェスカ・ダ・リミニ、ショパンのピアノ協奏曲第一番でした。(先の二つの記事は一緒に聴きにいった友人への曲紹介を兼ねて書いたものです。)ソリストはフィリーっ子に絶大な人気のランラン。指揮はもちろんエッシェンバッハ。演奏についてはまた後日書きます。

僕は今シーズンの終了を待つことなく日本に帰ります。面白そうな公演はなるべく聴きにいって感想をここで書いていこうと思いますのでよろしくお願いします。
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# by ring_taro | 2006-09-23 21:38 | ひとりごと
参考CD ポリーニ/クレツキ/フィルハーモニア管弦楽団(EMI)

ショパンが20歳の時の作品。まだ彼がポーランドにいた時代のものです。

一楽章。とにかく序奏が長い。ピアノソロが登場するのは実に4分が経過したあたりです。退屈に感じるかもしれませんが、これはもう我慢してピアノの登場を待ち焦がれるしかありません。しかしこの4分間、意味がないわけではありません。この楽章で展開される主題を提示してもらっているのです。この部分で旋律を頭に叩き込み、ピアノソロがそれらをどう料理してくれるのかワクワクしましょう。いうなれば食事前に「今日の食材」を見せてもらっているとでも考えてください。

まあ、要するに料理は始まっていないわけですが。こういった苦行はベートーヴェンの三番、ブラームスの一番などでも要求されます。
ただこの序奏部、スコアを見ながら聴くと幾度も転調を繰り返す様がとても巧みで面白いのですが。

で、ソロにはいってからも長いです。(通常、一楽章だけで20分前後近くかかります。)贅のかぎりを尽くしたかのようなめくるめくピアノ技巧と叙情をお楽しみください。

二楽章と三楽章は真っ当な長さですから、安心してお聴きください。
「ロマンス」と題された二楽章は管楽器が彩り程度の最小限の出番しかなく、ピアノソロと弦による伴奏というかたちで進んでいきます。ちょっとだけ気まぐれに紡がれる美しい旋律を堪能しましょう。三楽章は一転して快活なポーランドの舞曲です。

白状しますとこの曲、個人的に長らく「苦手な曲」でした。序奏部がとにかく退屈だし、ピアノソロが入ってからもショパンを楽しむにはあまりにも長すぎると感じていたからです。しかしポリーニの1960年録音のCDを聴き、その苦手意識をようやく払拭することが出来ました。とにかくこの録音は素晴らしいです。今までありがとう、アルゲリッチさん、ルービンシュタインさん。

このときポリーニは18歳。この録音の後すぐ8年に及ぶ研修期間(雲隠れ)を経て70年代以降一世を風靡するピアニストになるのですが、この時点で完成されているその凄まじすぎる技巧には驚くほかありません。そしてそれ以上に評価したいのは、この協奏曲にまとわりつきがちな気まぐれやセンチメンタルや優しさといった甘っちょろいもんを排したポリーニのストイックな姿勢です。ショパンの小品ならそういった軟派なものも必要かもしれませんが、40分に及ぶこの曲でやられると退屈になってしまうのです。実は70年代のポリーニのショパンに比べるとそれでも結構自由に弾いていると思うのですが、しかし曲全体を貫く強い意志に感服します。

クレツキ指揮のフィルハーモニア管もポリーニをしっかりとサポートしています。特別に何かをしているわけではないのですが、「ああ1960年頃のフィルハーモニア管だなあ」と安心させてくれる響きです。でも「フィルハーモニア管らしい」サウンドってなんだろう?少し薄めの弦のくすみつつも光沢のある響きかなあ。クレンペラーの指揮したものにはあまりないんですよね。カラヤンなんかが典型かな。

ちなみに僕の持っているCDにカップリングされている68年録音のバラード第一番は必聴です。人間として持っていけなきゃいけないいくつかの感情が欠落しちゃってるんじゃないかなあとすら思う、もはや悪魔の所行としか思えない演奏です。
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# by ring_taro | 2006-09-21 23:58 | クラシックの曲紹介
参考CD ムーティ/フィラデルフィア管弦楽団(EMI)

苦難の時に幸せな日々を思い出すことほどつらいことはありません。
あなたの師はおわかりになるでしょう。しかしあなたが私たちの愛の始まりを知りたいと強く望むのであれば、私は涙を流しそして語りましょう。
ある日、私たちはランスロットの物語を読みながら楽しい時を過ごしていました。彼がいかに愛の虜となったかの物語をです。
私たちは二人きりでした。なにもやましい思いなどありませんでした。
読み進めるうちに何度か私たちの目があい、血の気がひくのがわかりました。
しかし私たちを打ち負かしたのはたった一度、ほんの一度のことだったのです。
それは愛する人の口づけを待ち焦がれる微笑みのくだりを読んだとき。
この人は、そう、二度と別つことなどできないこの人は私の震える唇に口づけました。
ガレオットがその書であり、それを書いた人だったのです。
その日はもうそれ以上読み進みませんでした。

この話を語っているあいだ、もう一つの魂はずっと涙を流していた。
私はあまりの哀れさに気を失ってしまった。死んでしまったかのように崩れ落ちてしまった。
    (ダンテ『神曲』より)

この一説はチャイコフスキーが『フランチェスカ・ダ・リミニ』のスコアに記したものです(注)。フランチェスカとその義弟パオロはその密会を夫であり兄であるジャンチオットに見つかり殺され、地獄に堕ちます。そこで二人は吹き荒ぶ嵐のなかを永劫飛ばされ続けるという罰を受けます。地獄を旅するダンテは嵐のなかを寄り添うように飛んでいる二人に興味をおぼえ、フランチェスカからその事情を聞いてあまりの哀れさに気を失うというお話です。

この曲は大雑把にいうと序奏+ABAという形式です。
重苦しい序奏の後、地獄の嵐のパート(A)、クラリネットのカデンツ的なソロに導かれたフランチェスカの語る愛のパート(B)、そして嵐のなかに戻るフランチェスカとパオロと気を失うダンテを描いたパート(A)です。
彼がもう少し若い頃に作曲した『ロミオとジュリエット』に比べて今ひとつマイナーなのは、この衝撃的かつ悲劇的なエンディングのせいでしょうか。それとも題材が『ロメジュリ』の方がポピュラーだからでしょうか。中間部の愛の旋律の甘美な魅力は甲乙つけがたいものがあるのですが。

おすすめのCDは1991年録音のリッカルド・ムーティ指揮、フィラデルフィア管弦楽団のものです。嵐の部分のタイトなビートと緊張感、中間部の甘くそれでいて厳しいカンタービレ、まさにムーティのためのような曲です。フィラデルフィア管弦楽団は金管の能天気な軽さがちょっと気になりますが、弦の美しさに心を奪われます。

ちなみにムーティ/フィラデルフィア管には、こちらも「愛」と「地獄」を描ききったベルリオーズの『幻想交響曲』の録音もあります。あわせてお聴きになったらいかがでしょうか。

その他の録音ではムラヴィンスキー/レニングラード・フィルがいいです。録音だけでなくライブのDVDもでていて、これがとても面白いです。晩年のムラヴィンスキーの指揮は(チャイコフスキーの五番やショスタコーヴィチの五番などでは特に)もうほとんど指揮とはよべないような両手をなんだかひょろひょろしてる感じのものなのですが(まあ、そのちょっとした指のニュアンスからオケの音がグワーッと変化したりするのがたまらなく好きなのですが)、『フランチェスカ・ダ・リミニ』はさすがにやる機会が少ないのか比較的しっかりとした指揮ぶりです。なんだ、ちゃんと指揮できるんじゃん。

フィラデルフィア管の豊かな響きに比べ、よりストイックで険しい音楽となっています。フランチェスカとパオロの苦行を体感したいのならこちらかな。まあ冗談はさておき、クラリネット・ソロの独特な音色の魅力はちょっと他の演奏では聴けないものです。

余談になりますが、ロセッティに『パオロとフランチェスカ』という絵があります。中央部のダンテとヴェルギリウスを挟み、左には本を膝に口づけをかわす姿が、右には寄り添うように地獄をさまよう姿が描かれています。ものすごく素敵な絵ですし、機会があったらご覧になってください。曲により愛着がわくはずです。そういえばウィリアム・ブレイクにも同じ題材の版画があったな。確か気を失うダンテとつむじ風のなかに戻っていく二人が描かれていたはずです。


※注 上記の引用は私が英訳を自由に和訳したものです。そういった事情に加えて私の英語力と文学的センスにはかなり問題があるので、興味がある方はぜひ原典や出版された和訳をあたってください。
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# by ring_taro | 2006-09-20 17:10 | クラシックの曲紹介
いよいよフィラデルフィア管の新譜がOndineから発売されます。

今日、演奏会に行ってプログラムに挟み込まれていたチラシを見て初めて知りました。

曲はバルトークの『管弦楽のための協奏曲』を中心とした、エッシェンバッハならではの「第二次大戦もの」(このくくりかたもいかがなものかとは思いますが、ま、便宜的に)。今年五月の演奏会ですね。

楽しみだなー。この後、マーラーの交響曲がリリースされるのでしょうね。ひょっとしたら、来年にはベートーヴェンの交響曲全集とかもつくられるのかしら。
でもこのバルトークのCDは重要ですよね。もしこの録音がおかしなものだったら、世界中のクラシック・ファンに「フィラデルフィア管はもうダメだな」って思われちゃいますものね。なぜだかやたらドキドキしてきました。

店頭に並ぶのは10月31日からだそうな。
ちなみに拙のこの時の演奏会評はこちら
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# by ring_taro | 2005-10-15 14:20 | フィラデルフィア管弦楽団